1-4 「地続き」の平時と非常時の利用
スマートフォンは、パーソナルな情報端末として様々な生活のシーンで浸透しており、スマートフォンに災害情報を配信する仕組みは、既に世の中にあります。しかし、外国人のスマートフォンに、その利用言語で、アラート(警報)はもちろん、その後の救援や復旧、復興の情報もと伝えようとするものは、まだ、ありません。
東日本大震災では、防災行政無線が作動しなかったり、聞こえなかったりしたところがありました。そもそも、防災行政無線がない、整備が一部区域だけという地方自治体も少なくありませんでした。できるだけ多種の手段でもって伝えようという取り組みは、一人でも災害情報が届かない人の数を減らすことが目的なので、そのためにスマートフォンアプリを用意するのです。このアプリを普段からダウンロードしておいてもらうために、アプリの価値を平時にも創造して平時と非常時を「地続き」にすることが大事です。
多言語災害情報提供のシステムは、日本語でメッセージを選択・入力できます。非常時だけでなく平時にもメッセージを選択・入力できるので、外国人旅行者、外国人住民、そして日本人住民にもプッシュで情報を届けることができます。この平時のプッシュ情報の魅力を高めて、平時からアプリをダウンロードしておこうという人を増やすことができたなら、非常時に災害情報が届く人の数も増やせます。
例えば、日本に滞在している間、各地のWi-Fiアクセスポイントをフリーに、シームレスに利用できるアプリならば、外国人旅行者にとって魅力的でしょう。旅を応援してくれる便利なアプリやサイトが用意されているアプリにも訴求力があります。一方、外国人住民や日本人の場合は、フリーWi-Fiや観光情報を提供するわけではないので、アプリをダウンロードする動機は外国人旅行者の場合と違ってきます。暮らしに便利で、お得な情報といったものがインセンティブになるのかも知れません。
ダウンロードしようと思ってもらえる価値を作ることは簡単なことではありませんが、将来にわたり「自走」していくシステムが必要です。