1-1 多言語対応は選択ではなく必須の対策
日本は、海外の技術や文化を器用に吸収しつつも、普段の暮らしの中では外国語のコミュニケーションを必要としてきませんでした。しかし、外国人が普通に旅をし、外国人の留学生や研修生、労働者等が同じ町内に暮らす風景が、特別な観光地や大都市でなくても珍しくないのが今日の日本です。習慣や文化の違いによって外国人、日本人の双方に生まれるコミュニケーションの壁をどう超えていくのか。多言語対応は、全国各地で日常的に向き合う課題です。
物事が文字や音声などを使って表現され、人に伝わり、知覚されて何らかの意味が想起され、人の思考や行動に影響を与える「情報」を、私たちは日常的に、無意識に、そして大量に処理し、暮らしています。外国を旅し、暮らすときには、処理できる「情報」が細り、偏るのに対し、行動を決める「情報」が細らない環境を多言語対応によって整えていきます。住民として暮らす外国人に対し、周囲の状況に関する情報を的確に適切なタイミングで伝わるようにすることは、地方自治体だけの役割ではなく、就労者であれば事業主、留学生であれば大学、そして大使館・領事館等にも役割があるのでしょうが、少なくとも行政情報を多言語で伝えることはどこの地方自治体も目指すところでしょう。
情報通信技術の進歩は目覚ましく、以前には実現不可能だったことも、今は様相が変わっていることもあります。スマートフォンを誰もが簡単に手にし、クラウドサービスの登場でシステムの開発や運用が格段に簡単に安くなっているいま、多言語対応にも様々なソリューションの可能性が生まれています。